竜宮城に帰りたい。



「なぁ、晴〜?」

「なんや」

「ここわからん。
得意やろ?数学。」

「えぇーっと…」


二人の会話ばっか耳に入ってきて、
全然集中できない。


でも「ちょっと静かにして」なんて、口が裂けても言えない。

勉強教え合うのが目的の会なのに、それは私がおかしいし。


でも…

なんかすごく…



「ゆ、祐くん!!」

「ん?」

「あ、えっと…」

「なんかわからんな?
言っとくけど数学は俺無理や。」

「えっと…英語なんだけど…」


特にわからないところもなかったけど、
とりあえず今やっていた問題を指差した。


「んんー…文法か…
えーっと、ここはof入れるんちゃう?」

「え、でもこれ他動詞だから…」

「ほんま!?
じゃあこっちゃやの。」

「そ、そうだね!ありがとう。」


祐くんが目を細めて私を見つめてきた。


え、わからないのが嘘だってバレちゃったかな…

それとも晴たちの会話から意識そらすために質問したことがバレた…?



ドキドキしながら祐くんのセリフを待っていると、

意外な言葉が飛んできた。



「澪、頭ええやん!」

「え、え…?」


祐くんが大きな声でそう言うから、
晴たちの会話も一旦途切れた。




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