竜宮城に帰りたい。
ダメだ。
やっぱり二人の間に入り込む隙間なんて全然ない。
昨日のうちに諦めてホントよかった。
コンビニって確かすぐそこにあったし、
きっとすぐに…「澪!!」
「へ!?」
急に大きな声で名前を呼ばれたから、
怒られるのかと思い、体を強張らせた。
「大丈夫な?もう何回も呼んどったんやけど…」
「え、ホント?
ごめんなさい。気づかなかった…
ごめん…」
「そなん謝らんでええよ。
飯食おうで。」
「うん。」
お弁当箱を広げていると、祐くんが「なぁ」と私に話しかけてきた。
今度はちゃんと聞いていよう、と聴覚を研ぎ澄ます。
「何?」
「澪ってさ、劣等感みたいなん持ったことあんな?」
「え、劣等感…?」
そんなの毎日のように…
むしろ今この瞬間だって
「持ってるよ。」
「そっか…」
祐くんは私の答えを聞くと、
ホッとしたような顔で笑った。
「なんでそんなこと聞くの…?」
「いや、あののぉ、晴ってさ、ほんまなんでもできるんや。
勉強も運動も学校じゃあ一番。
おまけに金持ちやし、カッコええし、将来も期待出来る。」
「…でも!く、口とか悪いし…」
なんだか祐くんが辛そうに話すから、
なんとなく晴の欠点を口に出した。
「あの悪態ものぉ、慣れりゃあ可愛く思うんや。」
「……」
反論できない。
私がそう思っている一人だから。
「そうゆうことで、俺は昔っからあいつに負けまくってきた。
成績も好きな女の子も、まんで(全部)あいつに持っていかれよった…」
「……」
なんか…わかるな、この人の気持ち。
祐くんは
私に似ている。