竜宮城に帰りたい。
山に向かう途中、
祐くんがそれらしき山を指差しながら言った。
「紫雲出山はのぉ、ちょっとっした丘みたいなもんやけん、
あっちゅう間に頂上いけるで。」
「祐くん登ったことあるの…?」
「そりゃあ、遠足とかで何回かの。」
「そ、そうなの…!?」
何回も登ってるのに、私たちに付き合ってもらって申し訳ないな…
でも…
「あ、案内してくれてありがとう!」
「……」
「祐くん?」
急に祐くんが黙ってしまうから、
何か失言があったのかと自分の言葉を思い出す。
「何か、澪変わったのぉ…。」
「え…?」
変わった?
私が?
「ここに来た最初やったら、
今んとこ『ごめんなさい』って言ったと思う。」
「……」
言われてみればそうかもしれない。
数日前の私だったら、ちょっとでも相手の迷惑かもしれないと思ったら、すぐに謝ってた。
でも、今はもう、彼らが本当の厚意で行動してくれているって分かってるから…
こんなに信じられる関係って、そうできるものじゃないのに、
それが数日でできるようになったって、本当にすごいことだ。
「私は少しでも変わりたかったから、嬉しいな…。」
「ああ。
そやって思ったこと言ってええんや。
誰も責めたりせん。」
「うん…」
祐くんに褒めてもらったせいで、口角が緩む。
変わるんだ。
気弱だっただけのあの頃みたいな私じゃなくて、
本当に優しい人間になりたい。
大きくひとつ深呼吸を終えると、
ちょうど山の麓に着いた。