竜宮城に帰りたい。
浦島太郎が玉手箱を開けたとき、
乙姫様はさぞかし安心しただろうな。
浦島太郎はちゃんと私を覚えていてくれた。
寂しいときに私を思い出してくれた。
老人になることでそれを確かめて、
安心する。
ホント、勝手。
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「好きだよ」
そう言うと、晴は今まで痛いくらいに抱きしめていた両腕の力を抜いた。
それと同時に私も晴の背中に回していた腕をほどいた。
顔を見上げると、相変わらず寂しそうな目で険しい顔をしていた。
「晴?大丈夫?」
「…ごめん。」
「……」
何が…『ごめん』?
嫌な予感が脳裏をよぎる。
ホント、乙姫様はワガママだ。
残酷だ。
あなたが側にいてほしいと願うのなら、
彼はどこにも行かなかっただろうに。
「俺には…
瑞季がおるけん。」
あー、
いっぺん殴りたい、乙姫。