竜宮城に帰りたい。



「うーん…、でもお母さんたちの仕事がねえ。」

「お願い!」


顔の前で可愛く両手を合わせるゆかりを、お母さんは困ったように見つめている。


先ほど友人と遊んだ時、みんなと親の実家に帰省するという予定を話したらしく、羨ましくなったのだろう。

東京に住んでいるが故の「田舎」に恋焦がれる現象だ。



「あ。」



急にお母さんは私に目を向けると、「この手があったか」と言わんばかりのしたり顔を見せた。



「澪、あんたゆかりと一緒におばあちゃん家行ってあげなさいよ。」


「ぅえぇ〜。やだよ、面倒臭い。」


「そんなこと言わないの。

いっつもお正月の何日間かしか帰ってあげられなくておばあちゃん可哀想じゃない。」


おばあちゃんの家は東京から遠い。
クーラーがない。
海と山と畑しかない。

そんなところきっと退屈だ。


「やっぱりやだな…。」


「あんた、どうせ暇なくせにー」



勝手に暇だと決めつけられ、なんだか少しムッとした。




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