竜宮城に帰りたい。
髪も服も湿ってしまって、気持ちが悪い。
でも帰りたくない。
そんな葛藤を10分ほど続けていた。
その時ー
「澪」
振り返ると、同じくずぶ濡れの
晴がいた。
何これ、幻覚?
信じられなくて、私は自分の目を疑った。
だって、おかしいじゃん。
なんでこの浜にいると、晴と会うの?
「何がでっきょんな?」
「え?」
「はー。
何しよるん?」
晴はため息をつくと、そう言い直した。
「海を、見てました。」
私は気まずくて、プイッと海の方に顔の向きを戻した。
「体調悪いんとちゃうん?」
「……悪いけど…」
実はそんなに悪くはないけど。
「ほんだらはよいね。」
「……やだ。」
「っっ…」
「晴こそ帰りなよ。」
「はぁ!?病人置いていねるわけないやろ!」
いつも冷静な晴が声をあらげていて、
なんか変なの。
ていうか、よく昨日の今日で私に普通に話しかけられるよね。
私が…具合悪いって聞いてたから
ほっとけなくて…とか。
まさかね。
私は馬鹿馬鹿しい期待を消すと、
熱くなった頬も早く冷めろと念じた。