竜宮城に帰りたい。
「澪…
おい、聞け。」
「……」
晴をイラつかせるのは分かっているのに、
返事をする気にはなれなかった。
だって、なんでも晴の思い通りになるなんて癪だ。
「ええ加減にしまい。」
晴が私の腕を握ると、
そのまま体はふわっと立ち上がった。
「さ、触らないでよ…」
「言うこと聞かんけん、仕方なしや。」
予期せず晴と目が合い、
一瞬言葉に詰まる。
「なんで雨んなかぼーっとしとったんな?」
「……」
「澪……
昨日の…こと、やけど…」
ドキンっ…
嫌だ。
その話、したくない。
私、まだ諦めないもん。
迷惑だって言われても、好きなんだからやめてやんない。
晴の思い通りになんてならない!
「う、うるさい!
もう帰るからいいでしょ!」
「待て、澪!」
「っっ、離してよ!」
雨が本降りになってきた。
それなのに、晴は私の腕を掴んで離そうとしない。