竜宮城に帰りたい。
しばらく晴の手から逃れようと暴れたが、
力では勝てなかった。
ようやくおとなしくなった私を見て、晴は言った。
「お前、昨日のあれほんま?」
「あれって何。」
「やけん…告白。」
「っ、嘘なわけないじゃん!
嘘でたまるか!
どんだけ昨日、私が泣いたと…」
ああもう。
なんで自分でこんなこと言ってるんだ。
どんだけ晴が好きか、語ってるようなもんじゃないか。
「せやけん、今日来んかったんな?」
「そうだよ!分かれよ、バカ!」
私いつからこんなこと言えるようになったんだ…?
あの晴に。
「同情とかしたら許さない。
もういいでしょ、離して。」
そう言っているのに、
晴はますます私の腕をつかむ力を強めた。
「今離したら…どっか行くやんか。」
「晴が帰れって言ったんじゃん…」
なんで、そんな寂しそうなの?
いつにも増して、晴の瞳は黒く潤んでいるように見えた。
ただの天気のせいかもしれないけれど。