竜宮城に帰りたい。
「それで、今日はどこ行く?」
「うーん…。
なんも考えなんだわ。
他にええとこあるかのぉ、晴」
「祭りの準備でも見に行くんな?」
晴は答えたっきり庭の金魚を飼う池に目を奪われてしまったので、
祐くんに質問をする。
「お祭りって…この間言ってた?」
「そう。瑞季たちんくもその祭りに出店出したり、
町内会ので手伝わされとるんや。」
「そうなんだ…」
「たくま港まつりっちゅーんや。」
「晴は行ったことあるの?」
「ああ。毎年な。」
「ふーん。」
晴が毎年見に行くお祭りか…。
「花火がいに上がるんやで。」
「あ、いっぱいってことな。」
晴の方言を祐くんが慌てて直す。
結構ニュアンスで分かるようになってきたんだけどな。
「瑞季たちもおるやろし、行こうで」
「……うん。」
やっぱり晴の言う『瑞季』はあったかい。
それがまだ私の胸には刺さる。
何も気にしてない振りをして、
私はボロボロの自転車にまたがった。