竜宮城に帰りたい。



浜に着いた頃にはお昼を過ぎており、

真夏の炎天下が私たちを待っていた。



「浜に来たはええが、水着持っとらんのぉ」

「あ、そういえば。」

「ええよ、ボートでも乗ろうで。」

「ナイスアイデアや、晴。」



二人は以前私たちが出会った場所付近に私を連れていってくれて、
見覚えのあるボートを引っ張り出した。



「これ、祐んくのボートやけん」

晴がそう言うと、慣れた感じでボートを海に浮かべた。


「う、海でボート乗るの初めて…」

「酔わんようにな。」

「うん、ありがとう。祐くん。」


波に任せるまま漂うボートの上は、
確かに酔いそうだ。

これは早々に降りたいかも…



「ねぇ、ボートでどこ行くの?」

「丸山島。」

「あ…」


晴がぶっきらぼうに呟いたその答えに、
私は言葉をつまらせた。



いつかの夜、晴が連れていってくれた島だ。





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