竜宮城に帰りたい。
「あの島のぉ、引き潮ん時道がでっきょるんやで」
「へ、へぇ…」
祐くんが教えてくれたことは、以前瑞季ちゃんに聞いたことがあった。
というか、実際にその道を通って島に行ったんだけど、
なんとなく初めて知ったような返事をしてしまった。
でも、晴は何も言わなかった。
晴がずっと黙っているからあまり会話は弾まず、
船酔いをする前に島にたどり着くことができた。
「おい、祐。」
「んあ?」
「お前、ボート見ときまい。」
「は?なんでや。
いっつも平気やん。」
「今日は波荒いけん。
なくしよったら、怒られんのお前やろ。」
「はー。勝手なやつやのぉ」
祐くんはちょっとため息をついたが、
やはり晴の言う通り、ボートの側の岩に座った。
「行くで」
「え、うん。」
晴はいつかの夜みたいに、島の奥へ入っていった。