平成の戦争
父親の想い

俺には大切なものがある。
それは『家族』だ。
無論、俺の家族は15歳の息子のハル1人だけなのだが...。


妻はハルが7歳になる頃に交通事故で死んだ。

それも、日中トラックの運転で疲れ果てた野郎が歩道に突っ込んできて、不幸にも妻の体に命中。
それは、ハルと一緒に買い物に行った帰り道だった。

きっと、目の前で母親の死ぬ瞬間を見てしまったせいだろうか。

その時からハルは、一切本当の笑顔を見せなくなった。
素直で元気だったハルの笑顔は、ただの愛想笑いになっていき、ときどき見せる愛想笑いの後の表情は、まるで一人にしてくれとも言わんばかりのオーラが出ている。



〈ハルには俺しかいない〉

〈俺がハルを守らなければ〉



しかし、俺のこの想いは義務感から来たものだと裏目に出てしまったのだろう。
五年後にはハルと俺の会話は「おかえり」と「ただいま」だけになってしまっていた。

それから3年経った今でも、会話はそれだけ。なんて最低な父親だ。



だから俺は決めた。

何があっても、ハルには、幸せな人生を送らせる。

そして本気で誰かを大切だと思える日が来る時まで、俺はハルを見守る、と。



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