Beautiful World
隣に腰掛ける波音。


別に待ち合わせをしているわけでも、約束をしているわけでもないのに、波音と僕はいつも二人で海を見ている。


それが、僕たちにとって当たり前のことだから。


「波音、部活は?」


波音は泳ぐことが大好きだ。


当然のように、水泳部に所属している。


好きこそものの上手なれ。


波音はその言葉を体現するように、大会に出てはいくつも表彰状を貰うような選手になった。
 

そんな波音は、受験を控える三年生になっても部活に没頭している。


ほとんどの同級生は引退をして、受験に備えて勉強をしているというのに。


理由は明白。


彼女がまだ、試合に勝ち残っているから。


そういうわけで、ここのところ部活が忙しくて海に来る時間も夕方ごろだった波音が、今日はなぜか朝から来ている。


部活に行かなくていいのか、と聞いてみれば。


「……昨日、負けちゃったんだ」


僕の問いかけに、波音は海を見つめたまま答えた。


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