Beautiful World
物心ついたときから、違和感があった。


僕はどうして、ここにいるんだろう。


なんでこんなに海が好きなんだろう。


海が呼ぶ声を、みんなは聞くことができないのだろうか?


その疑問を、いつも胸に抱えていた。


寝てもさめても海を眺める僕を見て、両親は最初に自閉症を疑ったらしい。


けれど日常生活に問題があるわけでもなし、医師からその判断は出なかった。


けれど、健常者と同じ扱いを両親がしたかというと、話は別で。


僕はただ海が好きなだけなんだ。海に呼ばれているんだと訴えたが、あまり取り合ってもらえなかった。


幼いころは、なんで理解してくれないのかと衝突を繰り返したが、いつしか話すこともあきらめた。


そのころには両親も同じくあきらめて、僕が海に通うことを止めなくなった。


じっと砂浜に座って海を眺めていると、心が落ち着いた。


いつもある不安感が薄れ、すこし安らいだ気持ちになれる。


そうやって毎日毎日海を見つめながら考えて、出た結論。


それが、『僕は人間に生まれるべきものではなかった』というもの。


僕は、本当は海に生まれるはずだったんだ。


それなのに、何を間違ったのか、人間に生まれてきてしまった。


だから、海を見ていないと居心地が悪いし、落ち着かないんだと。


結論が出てしまうと、気持ちはすこし楽になる。


そんなころに、僕は波音と出会えた。


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