Beautiful World
小五の夏。


いつもの日課で海に行くと、先客がいた。僕と同い年くらいの女の子。


珍しい、と思いはしたけれど、特にそれ以上の感情を抱くことはなかった。


だけど、次の日も、その次の日も、またその次の日も同じ女の子が海に来ている。


『あの……』


この言葉で、僕たちの関係は始まった。


その当時、人との付き合いを半ば放棄していた僕だったけれど、なぜか波音には自然に声をかけていた。


海に来ている、ということだけで、すこし親しみを覚えたのかもしれない。


けれど、声をかけたはいいが、それ以降言葉が続かない。


そんな僕に、波音は笑って問いかけた。


『昨日も、おとといも、その前もここに来てた?』


『うん……』


『あたし、菊池波音。おんなじ小学校だよね? 見たことあるもん。名前、なんていうの?』


同じ小学校だったのかといまさらなことを知ったけれど、余計なことは言わずに聞かれたことだけに答える。


『五十嵐波糸』



『ナイト君、ね? ナイト君は、海が好きなの?』
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