愛と音の花束を
……また、胸がズキズキ痛む。
さっきから何だというんだろう、これは。

椎名が陰をまとったまま、私の横を擦り抜けていく。

焦ってその背中を追う。

大きな背中が、少し小さく見えて。

たまらなくなって。

「私が保証する。あなたは絶対上手くなる」

背中に向かって必死で声をかける。

だから、いつもみたいに笑ってよ。


椎名は立ち止まり。

肩をすくめた。


そうして私の方を振り返り。


笑顔で。
心からの明るい笑顔で。
目尻にシワが寄って、瞳がいきいきと輝いて、周りを明るく照らす笑顔で。

「あははっ、逆にすごいプレッシャー」

そう言った。



太陽のような明るさと、
青空のような気持ちよさ。

いつもの彼が戻ってきた。


そのことにすごくすごくほっとして。


ずっとその笑顔でいてほしいと思った。






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