愛と音の花束を
ホールの外はもう暗い。
みんなでホールの外に出ると、冷たい風が身体を吹き抜けていき、思わず身を縮める。
その寒さに、我に返った。
……ちょっと待った。
さっき、私、椎名に対して、何を思った? 何を言った?
思い出しかけて、あまりの恥ずかしさに慌てて記憶に蓋をする。
……私としたことが、かなり情に流された……。
ほらホール独特の雰囲気の中で感傷的な気分にさせられただけだ。想いのこもった音楽をたくさん聴いて感性も敏感になってたし。客席内の暖かさに脳みそも溶けてたんだ。きっとそうだ、そうに違いない。
「結花ちゃん、難しい顔してどしたの?」
「あー、椎名君、気にしないで。この子、感情あまり表に出さないで頭の中でぐるぐる考えるタイプなのよね。固まってる時は周りの声も聞こえなくなるみたいで。あたたかく見守ってあげてくださいな」
「そこ、聞こえてるから」
私が軽く睨むと、環奈は肩をすくめてペロっと舌を出した。