愛と音の花束を
一方、お客様が集中して聴いてくださってるのも伝わってくる。

今までの経験上、うまくいかない演奏の時は、客席もだらけた雰囲気になる。

だけど今回は、お客様もアラビアンナイトの世界に浸っていて、ステージと客席が一体となって非日常空間を作っているのを感じる。

すごく嬉しい。


そんな本番は、あっという間に過ぎていき、
最終曲となる第4曲。

三神君はさらに上げてきた。
きっと“テンション上がっちゃってる”んだろう。
このほとばしる情熱と、色っぽさといったら!

でも感情に任せて演奏が雑になるということは決してなく、頭はクールに、心は熱く、という理想的な状態を保ってるのはさすが。

演奏には、その人の人間性が反映されるという。
いつも穏やかで、理知的な彼だけど、内面はかなり情熱的。
それは今までの演奏からも感じたこともあったけど、恋愛が絡むとここまで熱っぽくなるとは、新発見。若いなぁ。

これで落ちないヴァイオリン経験者の独身女性がいたらお目にかかりたい。


そして早瀬先生はというと。
私を見て、好戦的な微笑みを浮かべた。
“さあ、こちらも行きましょうか”
そう言ってる。
私も口角を上げて答えた。
“ついていきます”、と。


早瀬先生はその通り、トゥッティ(ソロに対してオケ全体の演奏部分)で、みんなに向けて微笑みながら、さあ、クライマックスだから思いっきり行っていいよ、と振ってくれたものだから、すさまじいノリになった。


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