愛と音の花束を
大盛り上がりになった後、曲は静かに終わりを迎える。

三神君のヴァイオリンソロが、
ひたすらに美しく、
優しく、
甘く、
でも情熱を秘めて、
最後のフレーズを歌い上げていく。

この後、弦楽器はピアニッシモのピチカート。
最も気を遣う場面だ。
弦トップ同士で目配せし合い、後ろには絶対合わせて!と念を送る。

早瀬先生はそんな私達に対し、大丈夫、もっと力抜いて、優しい音で、と伝えてきた。

やっぱりこの人すごい。

そうして、
優しいピアニッシモのピチカートの音が揃って鳴り、ふわっと消えていき、
ヴァイオリンソロと木管の音だけが残り、

それも溶けるように消えていく……。



早瀬先生が左手をゆっくり握り、音をおさめる。



一瞬の静寂。



もう少しこの世界を味わい尽くしたい、
余韻に浸っていたい、
という希望と、
夢の世界が終わっちゃった、
というため息が、
ステージからも客席からも伝わってくる。


彼女はそれらの気持ちを受け取り、少しの間そうしてくれた後、静かに腕を下ろし、アラビアンナイトの魔法が終わったことを告げた。


途端!
物凄い拍手と、ブラボーの声!

早瀬先生はにっこり笑ってみんなに向かってうなづいてから指揮台を降り、三神君を立たせて握手をする。
「Good job.」と聞こえた。
そして、彼女が三神君をお客様の方を向かせると。

うわっ、
拍手の音量、今まで聞いた中で最大級!

団員も拍手&足踏み(弦楽器で拍手しづらい人は足を鳴らして拍手の代わりにする)。

もう、ほんと、すごい。すごすぎる。
ブラボー。

もっとあなたの演奏を聴きたい。

あなたは、私達とは格が違う、まぎれもないヴァイオリニストだ。


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