愛と音の花束を

休憩時間は、次の曲への準備時間。

前半の興奮がようやくおさまった練習室では、トップがAの音を自分のパート一人ひとりに回し、調弦を確認していく。
本番舞台上のチューニングは形式的なもので、事前にきっちり合わせておく、というのがうちの団のスタンス。

最後、椎名の番。

なるべく姿を見ないように、音だけに集中する。

ところがなかなか上手くいかず、いつもよりかなり苦労して合わせた。

「ごめん、ちょっと緊張してるみたいで」

思わず椎名の顔を見た。

「朝は緊張しないとか言ってたくせに」

彼は苦笑いを浮かべる。
やっぱり三神君とは正反対のタイプだ。

まあ、仕方ない。

「本番独特の空気というのはあるからね。でも大丈夫。早瀬先生はみんなのこと乗せるのすごく上手だから、乗っかればいいし、三神君も引っ張っていってくれるから、ついて行けばいい」

「……うん」

椎名の顔色はまだ優れない。

「始まっちゃえば大丈夫。後はみんなでカバーする」

「……うん」

テンション低いままだ。
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