愛と音の花束を

本番が終了しても、パートリーダーとしての仕事がある。

みんなが練習室でさっきの感想を言い合いながら盛り上がる中、私は手早く楽器を片付けて、着替える。

受付に届いた贈り物を、ヴァイオリンパートのみんなに配らなくてはならない。

ロビーに出ると、丁寧にアンケートを記入してくださっているお客様や、知り合いの団員が出てくるのを待っているお客様でごった返していた。

「結花、ヴァイオリンの分、これね。三神君のはこの山」

受付チーフの環奈がロビーの隅にある、ダンボールに入った大量の花束と紙袋を示した。

「椎名君に、きっちり整理してくれて助かったって言っといて」

「何で私が。直接言いなよ」

「忙しいもーん」

環奈がお客様対応に戻るのと入れ替わりに、その椎名が来た。

……さっき、もらい泣きしそうになったことを思い出して、懸命に心を落ち着かせる。

さっきのはアドレナリンのせい。拍手の音のせい。ステージの光のせい。

「手伝うよ。これ、みんなに渡して回ればいいんだよね?」

「うん。上がってくるの、早いじゃない」

若い男の子達と盛り上がってるのかと思った。
初ステージの感激に、もっと浸っていてもいいのに。

「半分しか乗ってないから、その分働かないと」

「環奈が褒めてた」

「せめて演奏以外で少しでも役に立ちたいじゃん」

こういうところ、偉いと思う。
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