愛と音の花束を
さて、と。
ヴァイオリンパートの人がいないかとロビーを見回すと。
あ、早瀬先生の旦那様。
目立つ容姿なので、すぐに分かった。
初老の紳士と話しながら階段を上ってくる。
彼らがこちらを見たので、会釈する。
……と、彼らがこちらに向かってきた。
何だろう。わざわざご挨拶してくれるんだろうか?
内心ドキドキしていると、
「椎名君」とお連れの初老の紳士から声がかかった。
ロマンスグレーという表現がぴったりの、渋く、優しそうなおじさま。
「先生……」
椎名がつぶやいた。
隣に立つ彼を見上げると、少し困った顔で硬直している。
「大丈夫。行っておいで」
私は椎名の手から紙袋を取った。
「……あ、ごめん」
椎名は、“先生”と呼んだ男性と、壁際に向かった。
「楽しい演奏会でした」
と、早瀬先生の旦那様。
「ご来場ありがとうございました。早瀬先生にはお世話になりました」
「次回も楽しみにしています」
社交辞令でもうれしい。
お上品な微笑みを残し、旦那様は出口へ向かっていった。
ヴァイオリンパートの人がいないかとロビーを見回すと。
あ、早瀬先生の旦那様。
目立つ容姿なので、すぐに分かった。
初老の紳士と話しながら階段を上ってくる。
彼らがこちらを見たので、会釈する。
……と、彼らがこちらに向かってきた。
何だろう。わざわざご挨拶してくれるんだろうか?
内心ドキドキしていると、
「椎名君」とお連れの初老の紳士から声がかかった。
ロマンスグレーという表現がぴったりの、渋く、優しそうなおじさま。
「先生……」
椎名がつぶやいた。
隣に立つ彼を見上げると、少し困った顔で硬直している。
「大丈夫。行っておいで」
私は椎名の手から紙袋を取った。
「……あ、ごめん」
椎名は、“先生”と呼んだ男性と、壁際に向かった。
「楽しい演奏会でした」
と、早瀬先生の旦那様。
「ご来場ありがとうございました。早瀬先生にはお世話になりました」
「次回も楽しみにしています」
社交辞令でもうれしい。
お上品な微笑みを残し、旦那様は出口へ向かっていった。