愛と音の花束を
もう……こういうの、苦手なのに。

でも、これはちゃんと労うチャンスだ。

落ち着いて。冷静に、冷静に。

「そちらこそ、よく頑張ったよ。みんなにも刺激になって、いつにない完成度の高さになったと思う。慣れるにつれて楽しめるようになるはずだから、これからも頑張ってほしい」

「うん、頑張ります」

椎名がガーベラを紙袋にしまい、違うものを取り出した。

「というわけで、はい」

目の前に差し出されたのは、ピンクと白の花束。
椎名が自分用に注文して、私が作った、あの“大人かわいい”花束。

一瞬、よく理解できなくて、固まっていると。

「ありがとうと、これからもよろしく、の気持ちをこめて、はい、結花ちゃんに」

夕陽に照らされた彼の顔は、優しく微笑んでいる。


…………やられた、と思った。


私なんかより、数段上の気遣い。

もうこの男、ほんと苦手。

「どうぞ」

ぎこちなく受け取り、「ありがと……」とボソリと言うと、彼は嬉しそうに笑った。

……胸がぎゅっとなり、どうにかしなくては、と焦る。

とりあえず顔は見てはいけない。

私は自分で作った花束を凝視しながら、言葉を絞り出す。
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