愛と音の花束を
「何が大人かわいい感じなんだか」

「感謝の花言葉をネットで調べたら、ピンクのバラとピンクのガーベラとカスミソウ、って出てきたから、ちょうどいいと思って」

「花言葉っていろいろありすぎてあまり信じてないんだけど」

「マジでっ⁈ お花屋さんなのに花言葉ディス⁉︎」

「別にディスってるわけじゃないよ。椎名みたいなお客様がいるから、知識としては持ってるけど自分は気にしてないだけ」

嘘を含む捻くれた答えにも、彼は何が楽しいんだか、声をあげて笑っている。

……もう、勘弁してほしい。


「じゃ」

ヴァイオリンケースや荷物を後部座席に乗せ、車に乗り込もうとすると、彼は「また練習で!」と手を振った。

「見送りはいいから、早く打ち上げ行って」

「了解。気をつけて帰ってね」

私が車に乗り込むと、彼は背を向けて歩き出した。

ほっとして、もらった花束を助手席にそっと置く。

「はぁぁぁ……」

盛大なため息とともに、ハンドルに突っ伏した。


……どうしよう。

……嬉しい。


花束をもらって嬉しくないわけがない。しかも面と向かってちゃんとお礼と共に渡されたのだ。大丈夫、人として当たり前の反応してるだけだ。自分の反応に自分で動揺することない。彼からだということを意識することない。

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