愛と音の花束を
3.痛む歯
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定期演奏会本番が終わっても、息つく間もなく、次の定演への準備を始めなくてはならない。
まずは反省会。
いつもの公民館の大部屋に入ると、椅子を並べている椎名の姿が目に飛び込んできて、心臓が跳ねた。
もう、これ、ほんと面倒。
奥歯にぐっと力をこめて、表情を保つ。
彼は私を見ると、いつも通り「おはよう」と微笑んで、作業を続けた。
気を取り直して、今日から始まる忙しい日々に向けて気合を入れる。
次の定演曲は、
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲と、
シューベルトの交響曲第8（9）番『ザ・グレート』。
これらの曲についてヴァイオリンパートのみんなへ練習の指針を示さなくてはならないし、コンミスとして各パートトップとの打ち合わせもしなくてはならないし、ヴァイオリンの入団希望者が2人も来ることになっている。
考えるべきこと、打ち合わせすべきことは山積みだ。
椎名を見て動揺してる場合じゃない。
