愛と音の花束を
三神君のことをからかっていた早瀬先生だけど、本来のメンコンの打ち合わせが始まれば、音楽家同士、真面目に議論することになった。
早瀬先生がピアノでオケ部分を弾き、三神君が実際にソロを弾いていきながら、テンポ、ニュアンスを擦り合わせていく。
「ここのtranquilloはそんなにテンポゆるめたくない」
「ここで僕はテンポ揺らして目一杯歌うけど、オケはインテンポで」
「クレッシェンドはここまでで、ここから落とそう」
私と羽生さんはそれぞれ、スコアにメモを取っていく。
私はついでにボウイングもつけていく。
三神君……すごい。
すごいとは思ってたけど、想像を超えるヴァイオリニストぶり。
軽く弾いてこれって。
あまりのレベルの違いに、少し不安になる。
この人の本気に、私達は応えられるだろうか。