愛と音の花束を
「ヴァイオリン弾くとき、顎に力入ってしまうことありませんか?」

「……あります」

「特にここ最近多いようですが?」

私は仕方なくうなづく。

「それから、奥歯が磨り減ってます。歯ぎしりが癖だと自覚されてますか?」

……はい。
これまた、うなづく。

それから、と椎名は立ち上がり、私の後ろに立った。

「ちょっと触りますね」

そう断ってから、私の首、肩、肩甲骨、背中に触れていく。

心臓が痛い。顔が熱くなる。背中側でよかった。

「かなり硬くなってますね。朝起きた時に痛みがひどいとのことでしたが、肩も凝って痛くないですか?」

……そう言われれば。

「顎全体は痛くないですか?」

……そんな気もするような。

椎名は再び椅子に座った。

「たぶん、寝てる時に、歯を噛み締めてると思います」

……自分じゃわからない……。

「まず、起きている間は、歯を噛み締めないよう気をつけること。ただ、口呼吸にすると口内が乾燥して歯垢が繁殖しやすくなりますので、唇は閉じて、鼻呼吸で口ポカン。起きてる時に意識することで、寝る時の噛み締めにも影響すると言われてますから、しばらくはしつこいくらいに意識してください。特にヴァイオリン弾く時は特に」

「……はい」
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