愛と音の花束を
その後、パートごとに分かれて、楽譜配布。
といっても、ヴァイオリンパートは曲によってファーストセカンドが入れ替わる人もいるので、ヴァイオリン全体(24人)で集まり、ファーストセカンドの振り分け発表も兼ねる。

「せっかくですので、みんなの自己紹介もしていきましょうか」

コンマスが提案する。

「各自、名前と、……椎名さん、何が知りたいですか?」

話を振られた彼は、少し考え、

「干支でお願いします」

と言った。

またも沸き起こる笑い。

……ついていけない。


ところが、これがまた結構盛り上がったのである。

「うそ、二回り違うの⁉︎」
とか、
「あー、そう言われれば猪っぽい」
「どこが?」
「すぐ走るところ」
(ここでは、テンポが速くなってしまう、という意味)
とか。

人数の多さゆえ、他のパートに比べてまとまりがないヴァイオリンパートが、かつてないほど盛り上がった。


そして、コンマスが干支を言い。

をを〜、とわけのわからないみんなの感嘆が渦巻く中、

「はい、永野さん」

私に振られた。

……言うのか。

……言わざるをえない、この雰囲気。

仕方なく、私の干支を言う。

その途端。

「俺とおんなじ!」

叫んだ男は。




……椎名氏だった。




12歳差があるとは思えない。
ということは。

同い年……。


さっきよりボリュームが上がった、をを〜、という、みんなの声が大部屋に響いた。



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