愛と音の花束を

3


あの時、何故承諾してしまったのか。

ああいうのを、言いくるめられたというのか。

そもそも何で2人で出掛けるのか。
マッサージ店の場所だけ教えてくれればよかったんじゃない?
枕のオーダーメイドだって、市内のショッピングモールに入ってる店でできるし。

私は、1人で出掛けることには何の抵抗もない。

一方、誰かと出掛けることには、……そうだ、これこそストレスじゃないの。
気の置けない友人ならまだしも、何を考えているのかわからない、どちらかというと苦手なタイプで、そもそも知り合いか同僚か部下か趣味仲間か呼び方さえ曖昧な男。

何を着ていくのか悩んだし、メイクのさじ加減だって悩んだし。
カジュアルすぎず、気合い入れすぎてないラインを探った結果、カットソーにガウチョパンツ、露出が高すぎずヒールも高すぎないサンダル。シンプルなネックレスとブレスレット。
メイクはまあ、それなりに。
髪型はショートなので、これは特に何もせず。
ネイルは足だけ。
アンクレットもしてくれば良かったかな。いや、それは気合入れすぎな感があるから、やっぱりなくて正解か。

足元を見ながら悶々としていると。

「ほら、また難しいこと考えてる」

慌てて顔を上げると、

……見慣れた笑顔が私を見下ろしていた。



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