愛と音の花束を
今日は電車で都内に出るということで、駅で待ち合わせをした。
朝の通勤ラッシュが終わった電車はそれほど混んでおらず、並んで座れた。
長い足と腕と体温がすぐ傍にあることに、また、どんな顔をすればいいのかわからなくなる。
普段電車に乗らないので、他人がすぐ隣にいる状況に慣れていないからだ。
普通の顔ってどんなだっけ。
奥歯を噛み締めるなと言われているので、奥歯で頬の内側のお肉を軽く噛んでみる。
うん。よし。
お互い、何も言わずに、流れていく窓の外の景色を眺める。
しばらくそうしていたけれど、先に沈黙に耐えられなくなったのは、悔しいことに私だった。
いや、ほら、沈黙したままでは悪いかと思って。
「病院……新しかったね」
「うん。3年前に建て直したから。元々は親父がやってたんだ。俺は歯大出た後は都内の大学病院で勤務医してたんだけど」
ああ、どうりで。
雰囲気が都会っぽいのは東京に暮らしてたからか。
「俺が継ぐことになって、好きなように作り替えていいっていうから、あんな感じにしてみた」
ああ、そうなんだ。
あったかくて、細部にまで気配りしてあって。
彼らしい。
朝の通勤ラッシュが終わった電車はそれほど混んでおらず、並んで座れた。
長い足と腕と体温がすぐ傍にあることに、また、どんな顔をすればいいのかわからなくなる。
普段電車に乗らないので、他人がすぐ隣にいる状況に慣れていないからだ。
普通の顔ってどんなだっけ。
奥歯を噛み締めるなと言われているので、奥歯で頬の内側のお肉を軽く噛んでみる。
うん。よし。
お互い、何も言わずに、流れていく窓の外の景色を眺める。
しばらくそうしていたけれど、先に沈黙に耐えられなくなったのは、悔しいことに私だった。
いや、ほら、沈黙したままでは悪いかと思って。
「病院……新しかったね」
「うん。3年前に建て直したから。元々は親父がやってたんだ。俺は歯大出た後は都内の大学病院で勤務医してたんだけど」
ああ、どうりで。
雰囲気が都会っぽいのは東京に暮らしてたからか。
「俺が継ぐことになって、好きなように作り替えていいっていうから、あんな感じにしてみた」
ああ、そうなんだ。
あったかくて、細部にまで気配りしてあって。
彼らしい。