愛と音の花束を

上野駅で電車を降り、公園を歩きながらやってきたのは、某有名美術館。

椎名は慣れた様子で進んでいく。

「絵は好き?」

ときかれたので、少し悩んだけれど、正直に、

「絵画はさっぱりわからないけど、ミュージアムショップの雑貨は好き」

と答えると、椎名は「そういうのもアリだよね」と笑ってうなづいた。

この男に対してはかっこつけて答えなくてもいいんだな、と思って、心のコリがとれた気がする。

そしてまた、ぼんやりとした幸福感に包まれるのを感じた。

……まずい。
これはちょっとひとりで頭を冷やしたい。

ショップの入り口で、

「お互いゆっくり回れるよう、別行動にしない?」

と提案すると、彼は気にした風もなく、

「了解」

と答えてくれた。


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