愛と音の花束を
頭を切り替え雑念を振り払いながら、自分の感性とお財布と相談し、買い物を済ませる。
店内を見回して、椎名の姿を探すと、
……いた。
目立つのは、大きいから……ではないな。
店内を見渡せば、派手な服装をした人もいるし、いかにも芸術系男性のオーラを放つ人だっている。
ああ、結論を裏付ける要素がどんどん増えていく。
さて、椎名は、どうやらTシャツを前に、悩んでいるらしい。
近づいてみると、ロダンの『考える人』がデザインされたTシャツ。ドットで描かれているのだけど、そのドットをよく見ると、小さな『考える人』。こういう遊び心、好きだな。
「あ、これ、どう?」
椎名が私に気づいて、笑った。
ドキっとする心を押し込め、「面白くていいんじゃない?」と答える。
「結花ちゃんにプレゼントしようかと思ったんだけど」
「え?」
「何となく、いつも難しいこと考えてる結花ちゃんみたいだなぁって。でも、女性はさすがに着づらいよね。むしろ俺がよく考えるように、これ買お。ごめん、待ってて」
椎名はいそいそとレジに向かっていった。
……もらったら、部屋着でもなんでも、着るのに。