愛と音の花束を
「いいから、言いますよ」
「はいどうぞ」
彼は私の番号を打ち込み、
「永野結花ちゃん、っと」
つぶやきながらスマホ画面をタップしている。
……なぜフルネームを。
しかも“ちゃん”付けって。
彼は私の思考を読んだように、にっこり笑って言った。
「演奏会のプログラムに載ってたよね?」
それはそうだけど、なぜ覚えているの。
しかもタメ口になってるし。
「仲良くなるには、名前覚えるところから。ね、そう思わない? 結花ちゃん」
な。
いきなり馴れ馴れしい!
社交的などと褒め言葉は使うものか。
「だって俺たち同い年でしょ?」
「私、早生まれなので、たぶん学年ひとつ上です」
「わぁ、何月生まれ?」
「……2月ですが」
「俺、12月!」
「やはり、私が上ですね」
「干支同じだもん」
と、その時私の電話が鳴った。
「あ、それ俺の番号」
私は無性にイラっとし、“椎名”とだけ打ち込んだ。
「結花ちゃんもさ、俺のことは名前で呼んでいいよ」
誰が呼ぶか。
椎名で充分だ。
「以上。本日はお疲れ様でした。今後ともよろしく」
私が立ち上がると、奴も立ち上がり、にっこり笑って、頭を下げた。
「よろしくお願いします!」
楽器に対する努力。
素直さ。
社交性。
ポイント高い要素はたくさんある。
……ただし、あくまで、ヴァイオリンパートの一員として。
男としては苦手なタイプ。
なるべく関わりたくない。
「はいどうぞ」
彼は私の番号を打ち込み、
「永野結花ちゃん、っと」
つぶやきながらスマホ画面をタップしている。
……なぜフルネームを。
しかも“ちゃん”付けって。
彼は私の思考を読んだように、にっこり笑って言った。
「演奏会のプログラムに載ってたよね?」
それはそうだけど、なぜ覚えているの。
しかもタメ口になってるし。
「仲良くなるには、名前覚えるところから。ね、そう思わない? 結花ちゃん」
な。
いきなり馴れ馴れしい!
社交的などと褒め言葉は使うものか。
「だって俺たち同い年でしょ?」
「私、早生まれなので、たぶん学年ひとつ上です」
「わぁ、何月生まれ?」
「……2月ですが」
「俺、12月!」
「やはり、私が上ですね」
「干支同じだもん」
と、その時私の電話が鳴った。
「あ、それ俺の番号」
私は無性にイラっとし、“椎名”とだけ打ち込んだ。
「結花ちゃんもさ、俺のことは名前で呼んでいいよ」
誰が呼ぶか。
椎名で充分だ。
「以上。本日はお疲れ様でした。今後ともよろしく」
私が立ち上がると、奴も立ち上がり、にっこり笑って、頭を下げた。
「よろしくお願いします!」
楽器に対する努力。
素直さ。
社交性。
ポイント高い要素はたくさんある。
……ただし、あくまで、ヴァイオリンパートの一員として。
男としては苦手なタイプ。
なるべく関わりたくない。