愛と音の花束を

後半の練習を終えると、疲労困憊。
頭痛がする。

帰り仕度をしていると、「やっぱり恋の力は偉大よね〜」という、ヴィオラの和歌子さんの弾んだ声が聞こえた。
見ると、和歌子さんがニコニコしながら三神君をツンツンしている。
「なになに⁉︎」三神君の周りに女性陣が集まっていく。
和歌子さんから、三神君に彼女ができたことが報告され、女性陣は大盛り上がり。当然大部屋全体にも波及していく。

そんな風景を横目で見ながら、ひとり早々に大部屋を後にした。



公民館を出て、夜空を見上げる。
今日は晴れている上に月がないので、星がよく見える。
私は駐車場とは反対方向に足を向けた。


市民オケの練習場として借りている公民館の隣にはグラウンドがある。
空を遮るものがない。
しかも今の時間は誰もおらず電灯がついていない。
ということは、星空がよく見えるのだ。

ベンチに座り、ぼんやり星空を眺める。

ものすごく疲れた時や、心がささくれた時や、たまに寂しくなった時、ここに来る。

『僕はもうそばにいられないけれど、星空はいつでもそこにあるから』

昔そんなことを言ってくれた人がいた。

星空を眺めたからといって、心が劇的に回復することはないけれど、少し落ち着く。こういうのを癒されるというんだろうか。


< 174 / 340 >

この作品をシェア

pagetop