愛と音の花束を
その時、足音と人の気配がした。
後ろを振り向くと、
……椎名が控え目な微笑みを浮かべて立っていた。
心がゆらゆら揺れる。
……会いたかったような、会いたくなかったような。
私は何も言わず、顔の向きを前に戻した。
「お疲れ様」
後ろから、優しい声が響いた。
あー、まずいなぁ。じんとくる。
「……うん」
「座っても?」
私はうなづきつつ、ベンチの端に移動した。
「お邪魔します」
椎名はゆっくりベンチに腰を下ろした。
好きな人がすぐそこにいて、
2人きりというのは、
こんなに胸が高鳴るものだっただろうか。
「駐車場とは反対方向に行くから、どこに行くのかなと思ってついてきてみた。こんなひと気のないところで、女性がひとりでいたら危ないよ?」
そうね。ひとりで星空を眺めるネックはそこだ。
「ということで、俺が用心棒代わりにここにいるから、思う存分一人反省会していいよ。何も言わないし何も見ない」
優しいけれど、色っぽさのカケラも感じないその口調に、心の中で苦笑する。
ドキドキしてるのは私だけか。