愛と音の花束を
悔しいので、普通に振るまうことにした。

「一人反省会できるほど、気力も脳みその容量も残ってない」

「そっか。……カッコよかったけど」

「冗談」

「特に、『最初からお願いします』って言ったとき。あれで今日の仕事の半分以上はしたでしょ」

苦笑いするしかない。

「ソリストとレベルが違いすぎた」

「でも、最初のアレ、たぶん、三神君も意識して緩めたわけじゃないと思うんだ。彼もおそらく怖かったんだよ。全力出して、仲間に引かれることが」

……思ってもみなかった。

「早瀬先生も、それをわかって、あの場面で敢えて、手を抜くなと指摘したんだと思う」

目から鱗が落ちる思いだった。

「さすがだなと思ったのは、練習後の和歌子さん。三神君に彼女できたことを話題にして、彼を孤立させなかった」

衝撃的ともいえる意見を立て続けに述べられ、あまりの自分の至らなさに、胃がぐるぐるしてきた。

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