愛と音の花束を


「冴えない顔してるね」

毒舌女王様、開口一番、それか。

土曜夜。
私は自分の店の営業時間終了後。
環奈は旦那さんと子どもを家に置き、行きつけのレストランに来ていた。

先日の電話で、初合わせで落ち込んでるだろうからと誘ってくれたのだ。
さすが私の性格をよく分かっている。

で、練習の話をひととおりして。

環奈はウンウンきいてくれて。

少し気分が晴れたところで、

「で、最近椎名君はどう?」

と訊かれたので、思わず先日椎名と出かけた話をしてしまった。

すると、環奈は、ふわとろオムライスを食べる手を止め、一気にまくしたてた。

「それはデート以外の何物でもない。嫌いだったらそもそも一緒に出かけない。何とも思っていなかったらそんなに世話は焼かないし男友達のところにも連れて行かない。導かれる答えはひとつ。友達以上に思われているということ」

……うん、やっぱり普通そう思うよね。

「問題なのは、友達“以上”ということね」

環奈は、“以上”にアクセントをつけ、語り続ける。

「“以上”ということは友達が含まれる。少ないながらも純粋に友達感覚である可能性は否定できない。とはいえ、」

「単なる友達みたいだよ」

環奈がこれ以上私を期待させるようなことを言う前に、ボソリとつぶやく。

環奈は目を見開いた。
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