愛と音の花束を
「ちょっとお待ちなさい。何その萎れた顔。……あらやだ私としたことが! 結花はそっちで落ち込んでたのね!」

いや別にそんなに落ち込んではいないつもりだけど。

「で、それは彼を好きだということでよろしいかしら?」

……無言の肯定。

「あらまあとうとう! 嬉しい! でもそんな萎れることないじゃない。今から友人以上に発展させていけばいいんだから」

相変わらずポジティブ。

だけど、私は俯いたまま、首を横に振る。

「今の関係のままでもいいかと思う。向こうを困らせたくないし。友達としてならこの先も一緒に音楽していけるから」

環奈は、憐れむような声でつぶやいた。

「……気持ちは、わからなくはないけど……」

言い淀み、少し間を置いて、真剣な口調で語り始めた。

「それでも、あえて言わせてもらう。

恋愛はタイミングだよ。あんないい男、いつまでも周りがほっとかない。誰かにとられてから泣いても遅いんだよ? 友達なんて、失恋してからでもなれるんだから」

それはポジティブすぎる。

「ちなみに、出かけた後、ちゃんとリアクションしたの?」

「え?」

「……やっぱりか……。出かけたの、いつ?」

「……1ヶ月くらい前かな……」

「はぁぁっ⁉︎ 1ヶ月ノーリアクション⁉︎ そんなん、結花の方から脈ナシって言ってるようなもんよ⁉︎」

「……そんなこと言われても……」

「もー、お互い同じこと考えてるんじゃないの、あなた達?

彼は気遣いの人だから、結花が困ったり気まずくなったりするようなことはしないタイプでしょ? 結花から『楽しかったからまた行こう』でもいいし、食事でもコンサートでも何でもいいから誘うか、誘われるよう仕向けないと、相手も踏み込んでこられないよ⁉︎」

……目からウロコ。

やはり友人の意見というのは貴重だ。



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