愛と音の花束を

打ち合わせを終え、建物の外に出ると、晴れの日の穏やかな午後。
ぼんやりとした幸福感に包まれながら駐車場に向かう。

と、見覚えのある赤いミニクーパーがとまっていた。

……椎名の車?

そう思ったとき、私が出てきたウエディングゾーンの方ではなく、レストランの出口から、人が出てきた。

やっぱり、椎名。

続けて、

……女性。

髪が長くて、ロングスカートをはいている。
遠目から見ても、目鼻立ちがはっきりしている美人だ。

女性は親しげに椎名に話しかける。椎名の表情は見えない。

女性は笑いながら椎名の頬を両手で挟んだ。

彼女の手はすぐに離れ、今度は腕を椎名の腕に絡ませた。



内臓がグルリとひっくり返るような感覚に襲われた。


さっき、プランナーの沼田さんが、見学のお客様がいると言っていた。


–––––––椎名達だったんだ。


私と2人きりでも、決して色っぽい雰囲気にはならなかったこと。

オケの練習の後、若者グループと食事に行くのをやめたこと。

昨日のオケの練習後、「明日は用事がある」と言っていたこと。

今までの色んな出来事がすべてつながっていく。



–––––––結婚、するんだ。



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