愛と音の花束を
…………血の気がひくというのは、こういうことを言うんだと思った。


頭がぐらぐらする。
あれ、身体も揺れてる?



2人は、私に気づかないまま車に乗り込み、走り去っていった。



彼女、いたんだ。
っていうか、できたんだ。
それはそうか。彼女いないって言ってたの、2月だもの。
何ヵ月経つんだって話だ。

『あんないい男、いつまでも周りが放っておかない』
『誰かにとられてから泣いても遅い』

環奈の言葉が蘇る。




–––––––これで、いいんだ。

友達ならば、いい友達だ。

友達ならば、ずっと一緒に音楽ができる。



そう必死で言い聞かせるにも関わらず、私の中に巻き起こっていくのは、強烈な嫉妬心だった。


彼に抱き締められるのは、私ではない。
彼に愛を囁かれるのは、私ではない。


身が焦げるようだった。


私のことをクールだと評した人間に、今の心の中を見せてやりたい。
本当にクールだったら、こんなにドロドロの感情は抱かないでしょう?と。






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