愛と音の花束を
□
そうして、水曜日。
オケの練習日。
幸い、お相手はオケの人間ではない。それだけは非常にありがたい。
彼の姿は探さない。
音楽に集中して、余計なことは考えない。
幸い、早瀬先生は、余計なことは考えさせてくれないほど、こちらに音楽について考えることを要求してくる。
終了後。
指揮台から降りた早瀬先生が来た。
ドキっとする。
彼女のことだ、いつもと違うこと、見抜かれたのか。
彼女は眉をひそめながら、「右手、見せてくださる?」と言った。
あ、そっちか。
私は、素直に右手を出す。
彼女は、小指の付け根の絆創膏を見て、顔をしかめる。
「痛むのね。どうりで……」
小指の怪我は、ヴァイオリンの弓のコントロールに影響してくる。今日は誤魔化しながら弾いたけど、彼女にはバレていたらしい。
「すみません。仕事でちょっと……」
「骨とか筋肉とか腱には影響ないのね?」
「幸い、ただの切り傷です」
彼女は私の右手を両手で包み、「早く治りますように」と祈ってくれた。
それは心に染み入るような優しさで、やっぱり失恋のことまで、彼女には気づかれているのかもしれないと思った。
そして、こんなことを自然にしてくれるこの人は、きっと愛されて育ったんだろう。
そうして、水曜日。
オケの練習日。
幸い、お相手はオケの人間ではない。それだけは非常にありがたい。
彼の姿は探さない。
音楽に集中して、余計なことは考えない。
幸い、早瀬先生は、余計なことは考えさせてくれないほど、こちらに音楽について考えることを要求してくる。
終了後。
指揮台から降りた早瀬先生が来た。
ドキっとする。
彼女のことだ、いつもと違うこと、見抜かれたのか。
彼女は眉をひそめながら、「右手、見せてくださる?」と言った。
あ、そっちか。
私は、素直に右手を出す。
彼女は、小指の付け根の絆創膏を見て、顔をしかめる。
「痛むのね。どうりで……」
小指の怪我は、ヴァイオリンの弓のコントロールに影響してくる。今日は誤魔化しながら弾いたけど、彼女にはバレていたらしい。
「すみません。仕事でちょっと……」
「骨とか筋肉とか腱には影響ないのね?」
「幸い、ただの切り傷です」
彼女は私の右手を両手で包み、「早く治りますように」と祈ってくれた。
それは心に染み入るような優しさで、やっぱり失恋のことまで、彼女には気づかれているのかもしれないと思った。
そして、こんなことを自然にしてくれるこの人は、きっと愛されて育ったんだろう。