愛と音の花束を
□
失恋すると、人の痛みに敏感になって、優しくなれる。
次の練習日。
ここ数回、仕事が忙しいと休んでいた野田さん(20代半ばの女性)が久しぶりに来たけれど、何だか元気がない。
おとなしめの女の子。
目立たないけどきっちり弾いてくれるタイプで、ファーストを弾くことが多い。
今日がメンコンのファーストでトップサイドの順番だった。
演奏が冴えない。数回休んでいたせいかと思ったけれど、それだけではないらしい。
よく小さくため息をついてる。
彼女の視線を追っていて気づいた。
ソリストの三神君をチラッと見ては、視線を外し、ため息をつくのだ。
ああ、そういうことか。
練習後、帰り支度をしつつ、野田さんの様子をうかがう。
女の子達の輪の中にいつつも、やっぱり元気がない。
これは一度話さないと。
と考えていたから、話しかけられるまで気づかなかった。
「結花ちゃん」
振り返るまでもなく、椎名だと分かる。
『そういえばこの間、ウエディングレストラン、見に来てたでしょう? 私仕事しに行ってたら偶然見ちゃって。結婚するんだね。おめでとう。』
何度も考えた台詞。
……だめだ、言えない。
照れ臭そうに笑って、ありがとう、と返されることを想像したら、怖くてとても言えない。
失恋すると、人の痛みに敏感になって、優しくなれる。
次の練習日。
ここ数回、仕事が忙しいと休んでいた野田さん(20代半ばの女性)が久しぶりに来たけれど、何だか元気がない。
おとなしめの女の子。
目立たないけどきっちり弾いてくれるタイプで、ファーストを弾くことが多い。
今日がメンコンのファーストでトップサイドの順番だった。
演奏が冴えない。数回休んでいたせいかと思ったけれど、それだけではないらしい。
よく小さくため息をついてる。
彼女の視線を追っていて気づいた。
ソリストの三神君をチラッと見ては、視線を外し、ため息をつくのだ。
ああ、そういうことか。
練習後、帰り支度をしつつ、野田さんの様子をうかがう。
女の子達の輪の中にいつつも、やっぱり元気がない。
これは一度話さないと。
と考えていたから、話しかけられるまで気づかなかった。
「結花ちゃん」
振り返るまでもなく、椎名だと分かる。
『そういえばこの間、ウエディングレストラン、見に来てたでしょう? 私仕事しに行ってたら偶然見ちゃって。結婚するんだね。おめでとう。』
何度も考えた台詞。
……だめだ、言えない。
照れ臭そうに笑って、ありがとう、と返されることを想像したら、怖くてとても言えない。