愛と音の花束を
「結花ちゃん?」

もう一度呼ばれた。
頬の内側のお肉を軽く噛み、表情を整え、振り返る。
目は合わせられない。

「あ、ごめん。何?」

「最近、仕事忙しいの? 予約キャンセルしたままだから」

……そう、だね。

「……ちょっと、色々、立て込んでて……」

「そっか。お疲れ様。でもなるべく早めに来てもらえると助かります」

椎名は最後は先生口調で言った。

その時、野田さんが帰ろうとしているのが目に入った。
私も慌てて荷物を手に取る。

「ちょっとごめん。野田さんに用事あるから」

「あぁ。そうしてあげて」

‼︎
思わず、彼の顔を見てしまった。
切なそうに微笑んで、うなづいた。

……まったく、この男は。




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