愛と音の花束を
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「いい年だし、落ち着いた感じにしたいんです。白に少しブルーが入ったこちらなんか、好みです」
30代半ばだという女性がそう言いながら、ウェディングブーケの写真がたくさん並ぶ中のひとつを指差した。
私はうなづき、メモをとる。
「ではこちらをベースにさせていただきますね。グリーンのバランスはいかがですか?」
私の本業は、花屋。
両親が開いていた小さな店を、専門学校卒業後から手伝い、3年前に店を継いだ。
もちろん店頭で接客もするけれど、外回りは私の役目。
配達もするし、提携しているフレンチレストランで、レストランウェディングのテーブルフラワーやブーケも請け負う。
本日、土曜日午前。
そのレストランで、花嫁さんとの打ち合わせ。
なるべく直接顔を合わせて、好みをきくのがポリシー。
店は親とパートさんに頼んでいる。
ウェディングの打ち合わせに来る花嫁さんは、みんな幸せオーラ満開かと思いきや、準備することや決めるべきことが多くて、ぐったりしている人、多数。
花婿さんが花嫁さんに丸投げタイプのカップルだと、花嫁さんが可哀想になる。
それでも、花の写真を前にすると大抵の人は笑顔になるので、私もほっとする。
この仕事をしていてよかったと思う瞬間のひとつだ。