愛と音の花束を


金曜日、歯医者に予約を入れるため、電話をかけた。
予約を取れるのが、一番早くて月曜日の午後イチだという。夜だと湿っぽくなるから、好都合だ。それでお願いした。


日曜の夜。

小さなアレンジメントを作る。
主役は、一輪の赤いバラ。
だけど、周りに色とりどりのガーベラやカーネーションを配置し、わざと目立たなくする。

最初に話しかけられた時から、熱心だったな。大勢で音楽やりたかったから、って言ってたな。
その通り、みんなにすぐ溶け込んだ。
それは彼の社交性も去ることながら、真面目さ・熱心さが受け入れられたのだと思う。しかも、周りがよく見えて、妙に鋭くて、だけど、だからこそ気遣いができて。
初めの頃はあの多面性が苦手だったけれど、そこに惹かれたのかな。
思い返すほど、モテ要素が多い男だな。
最初から意地をはらずに、好きになっていたら……と考えが及んだところで、それは考えるべきことではない、と振り払う。

彼の優しさに助けられたことは事実で、
好きになれたことで幸せだと感じることができたのも事実で。

この想いをきちんと認めた上で消化して、きれいに終わらせたい。

そうすればいい友人としての関係を作れる気がする。

……そして、そうすれば、新しい恋ができる気がする。



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