愛と音の花束を
「すみません、余裕がなくてうまく励ませなくて……」

「お気持ちだけでありがたいです」

「僕の師匠が言ってました。恋と失恋はどんどんしろ、と。恋は演奏を深くし、失恋は人生を深くするから……と」

……年下なのに、本当、敵わないなぁ。

「だから何だという感じですね。僕がもっと大人だったら、気の利いたこと言えるんでしょうけど」

肩をすくめる三神君。
本人は気づいていないかもしれないけど、彼女ができてから、雰囲気が少し変わった。
前はこんな風に自分を落とすようなことは言わなかった。
ますますいい男になってきてるなぁ、と感慨深い。

「三神君は充分、年齢より大人びてると思いますよ」

「まだまだ理想とは遠いです」

「理想ですか?」

「例えば、椎名さんみたいな?」

三神君は微笑みながら、でも目は笑っていないあの顔で私を見た。
私の反応を探っている目だ。

…………いい男でも、かわいくない。

私は表情を変えずに、言葉を返す。

「キャラが違うでしょう?」

「本質は結構似てますよ?」

どこが?
眉をひそめる私を見て、彼は笑った。

「いつか証明して差し上げますよ。では、お花、ありがとうございました」





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