愛と音の花束を
「何やってんですか」

私の後ろから声がした。

椎名だ。

彼は私の肩に乗っている設楽先生の腕をつかんで引き離す。

「うちの大事なコンミス兼パートリーダー困らせないでくれませんか」

設楽先生は肩をすくめる。

「はーい」

悪びれた様子もなく軽く答えたタイミングで、

「設楽先生、今日はよろしくお願いします」

と早瀬先生が登場した。

「マリちゃん! 先日はどうもね〜」

「こちらこそ、勉強させていただきました」

私達の挨拶もすむと、設楽先生は早瀬先生に言った。

「あいつが迷惑かけてるみたいで」

「ええ、でも今が最低ラインだとして、それなりの演奏にはなってます。さすが設楽先生が一番弟子だと誇るだけあります」

「それ本人には秘密ね?」

「もちろんです。この間はハッパかけさせてもらいました」

「あはは、どうりでがむしゃらに練習しまくってるわけだ」

2人はそんなことを話しながら、客席に向かっていった。

プロの音楽家、恐るべし……。
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