愛と音の花束を
内心唖然としつつ、隣に立つ椎名の顔を見上げると、私を見下ろす視線とぶつかった。
バツが悪そうに、苦笑いをしている。

「……バレちゃったなぁ」

「……どうりで、上手くなるわけだ。よく教えてもらえたね」

「家が近くなんだよね」

設楽先生の家は、あんな里山にあるのか。

「それでも、ついていってるのがすごい。設楽先生だって、見込みのない人を教えたりしないでしょう?」

今までに感じた、彼の音楽的センスの良さが裏付けられた気がした。

「体(テイ)のいい実験台なんだって」

彼は恥ずかしそうに笑った。

……久しぶりに、話をした。
友達らしい会話ができた。

これでいい。これがいい。





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