愛と音の花束を
打ち合わせを終え、プランナーさんと一緒に花嫁さんを見送った後、車で店に戻る。
正直、結婚を控えたカップルと会って、うらやましいなぁ、と思うことはよくある。
ここ5年、付き合った人がいないばかりか、好きになった人もいない。
それ以前には結婚に憧れた時期もあったし、実際近くまで進んだこともあったけど、結局踏み切れなかった。
結婚はタイミング。決断すべき時に思い切ってしないと取り残されるというのは本当かもしれない。
別に恋愛したくないわけではない。
その余裕がないというか、エネルギーがないというか。
朝は早く、夜は閉店後も花の手入れやディスプレイ変更、ウェディングがあればプランづくり。
定休日は週に1回、木曜日。
それでも店の花のメンテナンスはする。
そこに水曜日夜はオケの練習。
土日にトップが集まっての練習、会議が入ることもある。
もちろん時間がある限り自分のヴァイオリンの練習。
よほど好きになった人でないと、恋愛にエネルギーは割けない。
ただ、30歳を過ぎ、もうそんな情熱的な恋などできないだろうと思う。
そもそも、出会いがない。
オケ内恋愛はしないと決めている。
しかも、こんな休みのない女と付き合いたいと思う男も、いないだろう。
まあ、私の人生、この先もずっとこのままだとしても、それはそれでいいと思っている。
仕事をして、オケで楽器を弾いて、歳をとっていく。
幸いどちらも退屈とは程遠い。
それはとてもありがたいことだ。