愛と音の花束を

「オケ、ソロに遠慮して音量落とさないで! 落とすかどうかはもっと後で考えます!」
「オケはここ、もっと! ソリスト潰す気でいってください!」
「ただのアパッショナートじゃなくて、モルト・アパッショナート! ソロに負けない気持ちで!」

メンコン、オケ側の私達に早瀬先生の指示が次々と飛ぶ。
明らかに三神君を挑発している。
そんな三神君は、鳴らない楽器を気合いで鳴らしているような、ギリギリの苦しそうな演奏。
それでもきっと一般のお客様からすれば、『普通に上手い』と思うだろう。
でも、本来の彼はこんなものじゃないのだ。
どうか、本番までに復活しますように。


練習が終わり休憩に入ったところで客席を見ると、設楽先生と椎名が並んで座っている。設楽先生は椎名に向かって何事か話し、椎名はうんうんうなづいている。真剣な様子は、師匠が弟子に教える姿。本当に教え子なんだ。
そこに早瀬先生と三神君が向かう。
入れ違いに、椎名がその場を離れた。
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